産後・更年期の抜け毛は「血」と「腎」から|鍼灸師が教えるゆらぎ期の髪の変化と、鉄・たんぱく質・頭皮ケア

産後・更年期の抜け毛は「血」と「腎」から 更年期・ホルモン

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出産から数か月たったころ、シャンプーのたびに髪がごっそり抜けて驚いた。
40代後半になって、髪が細く、ボリュームがなくなってきた――。
女性の髪は、出産や更年期といった「ゆらぎ期」に大きく変化しやすいものです。

この記事では、産後と更年期の抜け毛の仕組みを研究報告から整理し、東洋医学の「血」と「腎」の見方、治療院でできること、食事と頭皮ケアを紹介します。

私が鍼灸師として大切にしているのは、「健康と美しさは表裏一体」という考え方です。ゆらぎ期は、体が大きく変わる時期。体の土台を整えて、髪のハリとボリュームを取り戻す。それが、私の考える「リバースエイジング」です。

この記事でわかること

  • 産後の抜け毛(休止期脱毛)と、更年期の髪の変化(エストロゲンの減少)の仕組み
  • 鉄不足と抜け毛について、研究で分かっていること・分かっていないこと
  • 東洋医学で「産後は血、更年期は腎」を補うと考える理由
  • 治療院でできることと、食事・頭皮ケア・受診の目安

施術の現場でよく受けるご相談

実際の施術の現場では、こんな声をよくお聞きします。

「出産後、シャンプーのたびに髪がごっそり抜けて怖くなりました」
産後の抜け毛に驚いてご相談に来られる方は多くいらっしゃいます。

「40代後半から、髪が細くなってボリュームが出ません」
更年期を迎える年代の方から、髪質の変化のご相談をよくいただきます。

「育児で自分のことは後回しで、髪も肌もボロボロです」
産後は、睡眠不足や疲れと一緒に、髪や肌の変化を感じている方が多いです。

※よくいただくご相談を、個人が特定されないよう一般化して紹介しています。

ゆらぎ期の抜け毛の仕組み

産後:たくさんの髪が一斉に「休止期」に入る

髪には、伸びる時期(成長期)、成長が止まる時期(退行期)、抜け落ちる準備をする時期(休止期)のサイクルがあります。
何らかのきっかけで多くの髪が一斉に休止期に入り、その後まとめて抜ける状態を休止期脱毛(休止期脱毛症)といいます。休止期脱毛についての総説では、産後の抜け毛も休止期脱毛のひとつのタイプとして挙げられています。[1]

臨床経験上、産後の抜け毛は、時間がたつにつれて落ち着いていく方が多い印象です。ただし、長く続く場合は他の原因が隠れていることもあるため、皮膚科で相談しましょう。

更年期:エストロゲンの減少が髪にも影響する

中年期の女性の抜け毛についての総説では、最も大きなホルモンの変化は更年期で、卵巣からのエストロゲンの分泌が止まることだとされています。エストロゲンの減少は、皮膚や髪などに好ましくない影響を与えることが知られています。
同じ総説では、中年期の女性によく見られる抜け毛として、女性型脱毛症、ヘアケアによる髪の傷み、休止期脱毛の3つが挙げられています。[2]

鉄不足との関係

鉄不足と抜け毛についての総説では、閉経前の女性の鉄欠乏性貧血の主な原因は月経と妊娠であるとされています。
鉄不足と抜け毛の関係を調べた研究には、関係があるとするものとないとするものがあり、現時点では結論が出ていません。そのうえで、鉄欠乏性貧血がある場合は治療すべきとされています。[3]
出産後や月経量が多い方は、自己判断でサプリメントを大量にとるのではなく、まずは血液検査で鉄の状態を確認するのが安心です。鉄のとりすぎは、体に鉄がたまりすぎる原因にもなります。[3]

東洋医学の見方:「血」と「腎」

  • 産後は「血」が不足しやすい:東洋医学では、妊娠・出産で多くの血を使うため、産後は血虚(血の不足)になりやすいと考えます。「髪は血の余り」とされ、血が不足すると髪が抜けやすくなると考えます。
  • 更年期は「腎」が衰えやすい:腎は成長・老化をつかさどり、「髪は腎の華」とされます。更年期は腎の衰えが表れやすい時期と考えます。
  • ゆらぎ期は「肝」も乱れやすい:睡眠不足やストレスで肝の働きが乱れると、血の巡りが滞りやすいと考えます。

髪の悩みに共通する「6つの背景」

臨床経験上、産後・更年期に限らず髪の悩みで相談に来られる方の多くが、次のような背景を抱えています。

  • 首・肩の緊張(こり)
  • 目の疲れ(眼精疲労)
  • 頭痛
  • 冷え
  • 睡眠不足
  • 栄養の偏り

これらは、大きく2つの面から髪に関わると考えています。

  • 血の巡りの面:首や肩の緊張、冷えは、頭への血の巡りを滞らせると東洋医学では考えます。髪の材料となる栄養が十分にとれていない、休息が足りないといった状態も、髪づくりの土台を弱らせます。日本皮膚科学会も、髪の新陳代謝には各種のビタミン・ミネラルが関わること、無理をせず休息をとることの大切さを挙げています。[4]
  • ストレスの面:ストレスを受けると分泌が増えるコルチゾールというホルモンは、毛包の働きや、髪が生えかわるサイクルに影響することが知られています。[5] マウスの研究では、慢性的なストレスでこのホルモン(マウスではコルチコステロン)が増えると、毛包が「休止期」にとどまる期間が長くなり、髪が生えにくくなることが報告されています。[6](人で同じことが起こるかは、さらに研究が必要です)

あなたはどのタイプ?東洋医学の体質チェック

上の6つの背景に加えて、東洋医学では「どんな体質の乱れがあるか」を見立てて、ケアの方向を決めます。次のサインは、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)の伝統医学の章で、それぞれの体質(証)の特徴として挙げられているものをもとにしています。[7]
当てはまる項目が多いタイプが、今のあなたの体質に近いと考えてみてください。いくつかのタイプが重なっていることも少なくありません。

① 血虚(けっきょ)タイプ:血が足りない

髪に表れやすいこと:ツヤが出にくい、パサつく、細くなる、抜けやすい

  • 顔色が青白い、または黄色っぽい。唇や爪の色が薄い
  • 肌が乾燥しやすい、爪が割れやすい・変形しやすい
  • 立ちくらみ・めまいがする、目がかすむ
  • 動悸がする、夢をよく見る、物忘れが増えた
  • 手足がしびれる、こむら返りが起こりやすい
  • 月経の量が少ない・色が薄い、周期が乱れやすい

おすすめのツボ:血海(けっかい)・三陰交(さんいんこう)・足三里(あしさんり)

② 瘀血(おけつ)タイプ:血の巡りが滞っている

髪に表れやすいこと:頭皮や顔色のくすみ、ツヤのなさ

  • 顔色が暗い、唇が紫っぽい
  • 青あざができやすい
  • いつも同じ場所が痛む(肩こり・頭痛など)
  • 月経痛が重い、月経血が暗い色で塊がまじる
  • 舌が紫っぽい、舌の裏の静脈が太く浮き出ている
  • 痔や静脈瘤がある、気分の波がある

おすすめのツボ:血海・三陰交

③ 腎虚(じんきょ)タイプ:生命力のもとが弱っている

髪に表れやすいこと:髪の勢いの低下、抜け毛、白髪

  • 腰や膝がだるい、力が入りにくい
  • 耳鳴りがする、物忘れが増えた
  • 夜中にトイレで目が覚める
  • 年齢より老けたと感じる、歯がぐらつく
  • 冷えるタイプ(腎陽虚):寒がり、手足や足腰が冷える、元気が出ない
  • ほてるタイプ(腎陰虚):手足や胸がほてる、寝汗をかく、のどが渇く、ほおが赤くなる、眠りが浅い

おすすめのツボ:太渓(たいけい)、冷えるタイプは腰の腎兪(じんゆ)を温める

④ 気滞(きたい)・肝火(かんか)タイプ:ストレスで巡りが滞る・熱がこもる

髪に表れやすいこと:ストレスが続くと悪化する、頭皮や首肩のこわばり

  • 気滞:のどがつかえる感じ、胸やわき腹・お腹が張る、気分が落ち込みやすい
  • 肝火:イライラしやすい、頭痛やめまい、目が赤く痛む、口が苦い、顔が赤くなりやすい、寝つきが悪い

おすすめのツボ:太衝(たいしょう)・合谷(ごうこく)

⑤ 脾虚(ひきょ)タイプ:栄養をつくる力が弱っている

髪に表れやすいこと:髪に栄養が回りにくく、血虚タイプにつながりやすい

  • 食欲がない、食後にお腹が張る
  • 便がゆるくなりやすい
  • 体がだるい、手足に力が入らない
  • 舌がぼってりして、ふちに歯のあとがつく

おすすめのツボ:足三里

臨床経験上、産後・更年期の髪の悩みで相談に来られる方は、血虚と腎陰虚のサインが重なっている方が多い傾向があります。腎の「精」と「血」がともに不足した精血不足(腎血虚)の状態として見立てることも少なくありません。そこに、睡眠不足やストレスから気滞・肝火が加わっていることもよくあります。

鍼灸院では、こうした問診に加えて、舌の色や形(舌診)、脈の状態(脈診)、お腹の張りや硬さなども診て体質を見立て、その方に合ったツボを選んで施術を組み立てます。[7] セルフチェックはあくまで目安として、気になる方は専門家に相談してください。

※急に耳が聞こえにくくなった、目が赤く強く痛む、今までにない激しい頭痛がある、といった場合は、体質の問題ではなく急いで治療が必要な病気のこともあります。すぐに医療機関(耳鼻咽喉科・眼科・内科や脳神経外科など)を受診してください。

治療院(鍼灸院)でできること

  • 血・腎を補うツボへのアプローチ:三陰交・血海・太渓・腎兪など、体質に合わせてツボを選び、鍼やお灸を行います。
  • 頭皮鍼と首・肩の調整:育児や家事で首・肩に負担がかかりやすい時期です。頭まわりのこわばりを整えます。
  • 自律神経を整える:睡眠不足やストレスが続きやすい時期は、リラックスしやすい状態をつくる施術を組み合わせます。

産後の施術は、体調や授乳の状況に合わせて内容を調整します。施術を受ける前に、出産からの期間や体調を鍼灸師に伝えてください。

ホームケアにプラスαで取り入れるなら

髪の材料を食事から:ザバス ソイプロテイン

髪の主成分はたんぱく質(ケラチン)です。忙しくて食事が偏りがちな時期は、食事を基本にしつつ、プロテインで補う方法もあります。

鉄を補う:ネイチャーメイド 鉄

鉄の栄養機能食品です。食事でとりきれない分を補う選択肢です。とりすぎに注意し、表示されている摂取目安量を守ってください。貧血が疑われる場合や持病のある方、授乳中の方は、医師に相談してから使いましょう。

頭皮ケアの習慣に:薬用育毛エッセンス

コーセーのインフィニティ 黒髪育毛エッセンスは、医薬部外品の育毛エッセンスです。頭皮マッサージと一緒に使うと、毎日のケアの習慣にしやすくなります。

自宅でできるセルフケア

  • 髪を引っぱらない:きついまとめ髪は、根元に負担をかけます。ゆるめにまとめましょう。
  • 頭皮マッサージ:指の腹で、耳の上から頭頂へ頭皮を動かすように1日3分。
  • ツボ押し:三陰交(内くるぶしから指4本分上、すねの骨の後ろ)、太渓(内くるぶしとアキレス腱の間)を、気持ちいい強さで押します。
  • 眠れるときに眠る:産後は、まとまった睡眠がとりにくい時期です。短い時間でも横になって体を休めましょう。

体質チェックで当てはまったタイプのツボは、こちらを参考にしてください。

ツボ場所主なタイプ
血海(けっかい)ひざのお皿の内側の上の角から、指3本分ほど上にあるくぼみ血虚・瘀血
三陰交(さんいんこう)内くるぶしの一番高いところから、指4本分ほど上。すねの骨のきわ血虚・瘀血
足三里(あしさんり)ひざのお皿の外側の下にあるくぼみから、指4本分ほど下脾虚・血虚
太渓(たいけい)内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ腎虚
太衝(たいしょう)足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ気滞・肝火
合谷(ごうこく)手の甲で、親指と人差し指の骨が交わるところの、人差し指側のくぼみ気滞・肝火

指の腹で、気持ちいいと感じる強さで5秒ほど押し、ゆっくり離します。これを3回ほど繰り返しましょう。妊娠中の方は、三陰交と合谷を強く刺激しないでください。

よくある質問(Q&A)

Q1. 産後の抜け毛はいつまで続く?

A. 産後の抜け毛は、ホルモンの変化をきっかけに起こる一時的なものとされることが多いですが、期間には個人差があります。長く続く、地肌が透けるほど薄くなった、といった場合は皮膚科で相談してください。

Q2. 更年期の抜け毛に育毛剤は使える?

A. 医薬部外品の育毛剤は、頭皮と今ある髪を整えるケアとして取り入れられます。薄毛がはっきり進んでいる場合は、皮膚科で女性型脱毛症などの診断を受けたうえで、治療薬も含めて相談するのが近道です。

Q3. 授乳中でも鍼灸は受けられる?

A. 授乳中でも鍼灸を受けることはできますが、体調や出産からの期間に合わせて施術内容を調整します。施術前に、授乳中であることや体調を鍼灸師に伝えてください。

Q4. 鉄のサプリは飲んだほうがいい?

A. 鉄不足と抜け毛の関係は、研究でも結論が出ていません。鉄のとりすぎは体に負担になることもあるため、まずは血液検査で鉄の状態を確認し、医師に相談するのが安心です。

Q5. 抜け毛を減らすシャンプーの仕方は?

A. 爪を立てずに指の腹で洗い、すすぎ残しがないようにしっかり流しましょう。洗った後は、自然乾燥ではなくドライヤーで根元から乾かすのがおすすめです。

Q6. 受診したほうがいいのはどんなとき?

A. 抜け毛が長く続く、地肌が透けて見えるほど薄くなった、円形に抜けている、頭皮に赤み・かゆみがある、強いだるさや動悸を伴う、といった場合は、皮膚科や婦人科・内科を受診してください。甲状腺の病気や貧血など、体の病気が関わっていることもあります。

まとめ:
産後の抜け毛は休止期脱毛のひとつ、更年期の髪の変化にはエストロゲンの減少が関わります。
東洋医学では、産後は「血」、更年期は「腎」を補うことを大切にします。
たんぱく質と鉄を意識した食事、頭皮ケア、体を休める時間で、ゆらぎ期の髪を支えていきましょう。

ゆらぎ期は、新しい自分への準備期間です。あなたの全盛期は、これからです。

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出典

  1. Rebora A. Proposing a Simpler Classification of Telogen Effluvium. Skin Appendage Disord. 2016;2(1-2):35-38. doi:10.1159/000446118(PubMed より)
  2. Mirmirani P. Managing hair loss in midlife women. Maturitas. 2013;74(2):119-122. doi:10.1016/j.maturitas.2012.10.020(PubMed より)
  3. Trost LB, et al. The diagnosis and treatment of iron deficiency and its potential relationship to hair loss. J Am Acad Dermatol. 2006;54(5):824-844. doi:10.1016/j.jaad.2005.11.1104(PubMed より)
  4. 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 脱毛症」Q18 qa.dermatol.or.jp(2026年10月12日確認)
  5. Thom E. Stress and the Hair Growth Cycle: Cortisol-Induced Hair Growth Disruption. J Drugs Dermatol. 2016;15(8):1001-1004. PMID:27538002(PubMed より)
  6. Choi S, et al. Corticosterone inhibits GAS6 to govern hair follicle stem-cell quiescence. Nature. 2021;592(7854):428-432. doi:10.1038/s41586-021-03417-2(PubMed より)
  7. World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics, Chapter 26: Supplementary Chapter Traditional Medicine Conditions – Module I(血虚 SF00、瘀血 SF01、気虚 SE90、気滞 SE91、肝火上炎 SF58、脾気虚 SF70、腎気虚 SF90、腎陰虚 SF93、腎精不足 SF96、腎陽虚 SF97 ほか)icd.who.int(2026年10月12日確認)

免責事項

本記事は一般的な健康・美容情報の提供を目的としており、診断や治療の代替ではありません。抜け毛が続く方、産後・授乳中の方、持病のある方は、医師・鍼灸師にご相談ください。サプリメントは表示されている摂取目安量を守ってご使用ください。

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