同じ「肩こり」でも、鍼灸院では人によって使うツボが違います。同じ「抜け毛」でも、すすめるセルフケアが違うこともよくあります。
それは、悩みそのものだけやなくて、その人の「体質」を見ているからなんです。
この記事では、東洋医学でいう体質を9つのタイプに分けて、セルフチェックできるようにまとめました。当てはまるサインを数えながら、今の自分の体質を確かめてみてください。
私が鍼灸師として大事にしているのは、「健康と美しさは表裏一体」という考え方です。髪や肌の変化も、体の中の状態とつながっています。自分の体質を知ることは、体の土台から整えて、いい状態を取り戻していくための第一歩。それが、私の考える「リバースエイジング」です。
この記事でわかること
- 東洋医学の「体質(証)」の考え方
- 9タイプの体質セルフチェックと、タイプ別のツボ
- 重なりやすい体質の組み合わせ
- 悩み別に、関係の深い体質がわかる早見表
- セルフチェックの注意点と、医療機関を受診したいサイン
東洋医学の「体質(証)」とは
東洋医学では、体の状態を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスと、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きから見立てます。この見立てを「証(しょう)」といいます。
- 気:体を動かし、温め、守るエネルギー
- 血:体のすみずみに栄養と潤いを届けるもの。髪や肌の材料にもなります
- 水:血以外の体の水分。体を潤したり、めぐったりしています
- 五臓:たとえば「脾」は食べたものから気や血をつくる働き、「腎」は成長や老化、生命力のもとにかかわる働き、「肝」は気や血の流れを調整する働き、といったように役割を分けて考えます
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)には、伝統医学の章があります。気・血・水や五臓ごとに、それぞれの体質(証)の特徴が定義されています。[1] この記事のチェック項目は、その定義をもとにしています。
知っておいてほしいこと
- この9タイプが、東洋医学の体質のすべてではありません。東洋医学には、もっと細かい見立てがたくさんあります。ここでは、髪や肌、体の不調の相談でよく出てくるものを、わかりやすく9つにしぼって紹介しています
- 体質は一つに決まるものではありません。いくつかのタイプが重なっていることの方が多いです
- 体質は、季節や年齢、生活のリズム、ストレスなどで変わっていきます。今の結果は「今の自分」のものと考えてください
9タイプの体質セルフチェック
それぞれのタイプのサインのうち、当てはまるものが多いタイプが、今のあなたの体質に近いと考えてみてください。いくつかのタイプで同じくらい当てはまる場合は、その組み合わせが今の体質です。
気(き)の乱れ
① 気虚(ききょ)タイプ:エネルギーが足りない
- 疲れやすい、元気が出ない
- 体に力が入らない、だるい
- 少し動くと息が切れる
- 話すのがおっくう
- 食欲がない
- 暑くないのに汗が出る
出やすい悩み:髪に勢いがない、根元が立ち上がりにくい、肌のハリが出にくい、かぜをひきやすい
おすすめのツボ:足三里(あしさんり)
② 気滞(きたい)タイプ:気の巡りが滞っている
- のどに何かつかえる感じがする
- 耳がつまったような感じがする
- 胸やわき腹が張る、お腹が張る
- 気分が落ちこみやすい
- 張るような痛みがある
- ストレスがかかると症状が強くなる
出やすい悩み:首・肩のこり、頭皮のこわばり、ストレスで抜け毛が気になる
おすすめのツボ:太衝(たいしょう)・合谷(ごうこく)
関連記事:髪のツヤ/産後・更年期の抜け毛
血(けつ)の乱れ
③ 血虚(けっきょ)タイプ:血が足りない
- 顔色が青白い、または黄色っぽい。唇や爪の色が薄い
- 肌が乾燥しやすい、爪が割れやすい
- 立ちくらみ・めまいがする、目がかすむ
- 動悸がする、夢をよく見る、物忘れが増えた
- 手足がしびれる、こむら返りが起こりやすい
- 月経の量が少ない・色が薄い、周期が乱れやすい
出やすい悩み:髪が細くなる、パサつく、ツヤが出にくい、抜けやすい、目の下のクマ
おすすめのツボ:血海(けっかい)・三陰交(さんいんこう)・足三里
④ 瘀血(おけつ)タイプ:血の巡りが滞っている
- 顔色が暗い、唇が紫っぽい
- 青あざができやすい
- いつも同じ場所が痛む(肩こり・頭痛など)
- 月経痛が重い、月経血が暗い色で塊がまじる
- 舌が紫っぽい、舌の裏の静脈が太く浮き出ている
出やすい悩み:顔や頭皮のくすみ、クマ、しつこい肩こり
おすすめのツボ:血海・三陰交
水(すい)の乱れ
⑤ 水滞(すいたい)・痰湿(たんしつ)タイプ:余分な水がたまっている
- 体や手足が重だるい
- 頭が重い、めまいがする
- むくみやすい
- 食欲がない、お腹が張る
- 便がゆるくなりやすい
- 口の中がねばつく、痰が出やすい
- 舌の苔(こけ)が白く厚い、べたっとしている
出やすい悩み:顔のむくみ、フェイスラインのもたつき、雨の日の頭重感、頭皮のべたつき
おすすめのツボ:陰陵泉(いんりょうせん)・足三里
関連記事:顔のたるみ
⑥ 潤い不足(陰虚・燥)タイプ:体の潤いが足りない
- 口やのどが乾く、水をよく飲みたくなる
- 唇が乾く、口の端が切れやすい
- 肌が乾燥する、かゆみが出やすい
- 目や鼻が乾く、から咳が出る
- 便が硬い、便秘しやすい
- 手足や胸がほてる、寝汗をかく、ほおが赤くなる
出やすい悩み:髪の乾燥・パサつき、頭皮のかゆみ、肌の乾燥や小じわ
おすすめのツボ:太渓(たいけい)・三陰交
関連記事:秋の抜け毛
五臓(ごぞう)の乱れ
⑦ 脾虚(ひきょ)タイプ:食べたものを気や血に変える力が弱っている
- 食欲がない、食後にお腹が張る
- 便がゆるくなりやすい
- 体がだるい、手足に力が入らない
- 顔色が黄色っぽい、または青白い
- 舌がぼってりして、ふちに歯のあとがつく
出やすい悩み:髪や肌に栄養が回りにくい(血虚につながりやすい)、むくみ、たるみ
おすすめのツボ:足三里
⑧ 腎虚(じんきょ)タイプ:生命力のもとが弱っている
- 腰や膝がだるい、力が入りにくい
- 耳鳴りがする、物忘れが増えた
- 夜中にトイレで目が覚める
- 年齢より老けたと感じる、歯がぐらつく
- 冷えるタイプ(腎陽虚):寒がり、手足や足腰が冷える、元気が出ない
- ほてるタイプ(腎陰虚):手足や胸がほてる、寝汗をかく、のどが渇く、ほおが赤くなる、眠りが浅い
出やすい悩み:白髪、抜け毛、髪の勢いの低下、腰痛、足腰の冷え
おすすめのツボ:太渓、冷えるタイプは腰の腎兪(じんゆ)を温める
関連記事:白髪/薄毛/産後・更年期の抜け毛
⑨ 肝火(かんか)タイプ:熱がこもって頭にのぼる
- イライラしやすい、落ち着かない
- 頭痛やめまいがする
- 目が赤く痛む、充血しやすい
- 口が苦い、のどが渇く
- 顔が赤くなりやすい
- 寝つきが悪い
出やすい悩み:頭皮の赤みやほてり、ストレスが続いたときの抜け毛、目の疲れ
おすすめのツボ:太衝・合谷
関連記事:髪のツヤ/産後・更年期の抜け毛
※急に耳が聞こえにくくなった、目が赤く強く痛む、今までにない激しい頭痛がある、といった場合は、体質の問題ではなく急いで治療が必要な病気のこともあります。すぐに医療機関(耳鼻咽喉科・眼科・内科や脳神経外科など)を受診してください。
重なりやすい体質の組み合わせ
体質は、一つだけということは少なくて、いくつかが重なって出てくることが多いです。ICD-11 でも、組み合わさった体質がいくつも定義されています。[1] よく出てくる組み合わせを紹介しますね。
| 組み合わせ | どんな状態か |
|---|---|
| 気虚+血虚(気血両虚) | エネルギーも栄養も足りない状態。疲れやすく、髪や肌にハリやツヤが出にくい |
| 脾虚+血虚 | 食欲が落ちて、血をつくる力も弱っている状態。めまい、顔色の悪さ、月経の量が少ないなど[1] |
| 気滞+瘀血 | ストレスで気が滞り、血の巡りまで悪くなった状態。気分の落ちこみ、張るような痛みや刺すような痛み、舌の紫っぽさなど[1] |
| 肝腎陰虚 | 肝と腎の潤いがともに足りない状態。めまい、目のかすみ、耳鳴り、物忘れ、腰や足のだるさ、ほてり、寝汗など[1] |
施術の現場では、髪の悩みで相談に来られる方は、血虚タイプのサインが目立って、そこに瘀血・脾虚・腎虚のタイプが重なっていることがよくあります。産後や更年期の髪の悩みでは、血虚と腎陰虚のサインが重なっている方が多く、そこに睡眠不足やストレスから気滞・肝火が加わっていることもよくあります。
悩み別:関係の深い体質の早見表
悩みから、関係の深い体質と、くわしい記事を探せるようにまとめました。
| 悩み | 関係の深い体質 | くわしい記事 |
|---|---|---|
| 髪のツヤ・パサつき | 血虚・潤い不足・瘀血 | 髪のツヤ |
| 髪のボリューム・ハリ | 腎虚・血虚・気虚 | 髪のボリューム |
| 白髪 | 腎虚・血虚 | 白髪 |
| 産後・更年期の抜け毛 | 血虚・腎虚(陰虚)・気滞・肝火 | 産後・更年期の抜け毛 |
| 秋の抜け毛 | 気虚・脾虚・潤い不足 | 秋の抜け毛 |
| 目のクマ | 血虚・瘀血・脾虚 | 目のクマ |
| 顔のたるみ・むくみ | 気虚・水滞・瘀血 | 顔のたるみ |
| 冷え | 腎虚(陽虚)・血虚・気滞 | 冷えはタイプで違う |
| 慢性的な腰痛 | 腎虚・瘀血 | 慢性的な腰痛と「腎」 |
体質に合わせた、毎日の整え方
| タイプ | 意識したいこと |
|---|---|
| 気虚・脾虚 | まずはしっかり寝ること。冷たいものや食べすぎで胃腸に負担をかけないように、温かいものを中心に。疲れている日は、がんばりすぎない |
| 気滞・肝火 | 深呼吸や軽い散歩で、こもった気を外に出してあげる。寝る前のスマホや、刺激の強いもの・お酒のとりすぎは控えめに |
| 血虚 | たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)と、鉄をふくむ食材を意識して。夜ふかしは血を消耗すると考えるので、早めに休む |
| 瘀血 | 同じ姿勢を続けず、こまめに体を動かす。首や肩、お腹、足元を冷やさない |
| 水滞・痰湿 | 甘いもの・脂っこいもの・冷たい飲みもののとりすぎに注意。軽く汗をかく運動で、水の巡りをよくする |
| 潤い不足 | 夜ふかしを避けて、しっかり寝る。辛いものや熱いお風呂の長湯はほどほどに。部屋の乾燥にも気をつけて |
| 腎虚 | 腰と足元を冷やさない(冷えるタイプ)。睡眠をしっかりとる。年齢に合った無理のない運動を続ける |
体質に合わせて選ぶツボ
| ツボ | 場所 | 主なタイプ |
|---|---|---|
| 足三里(あしさんり) | ひざのお皿の外側の下にあるくぼみから、指4本分ほど下 | 気虚・脾虚・血虚・水滞 |
| 太衝(たいしょう) | 足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ | 気滞・肝火 |
| 合谷(ごうこく) | 手の甲で、親指と人差し指の骨が交わるところの、人差し指側のくぼみ | 気滞・肝火 |
| 血海(けっかい) | ひざのお皿の内側の上の角から、指3本分ほど上にあるくぼみ | 血虚・瘀血 |
| 三陰交(さんいんこう) | 内くるぶしのいちばん高いところから、指4本分ほど上。すねの骨のきわ | 血虚・瘀血・潤い不足 |
| 陰陵泉(いんりょうせん) | すねの内側を骨に沿って指でなで上げていき、ひざの下で指が止まるくぼみ | 水滞・痰湿 |
| 太渓(たいけい) | 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ | 腎虚・潤い不足 |
指の腹で、気持ちいいと感じる強さで5秒ほど押して、ゆっくり離します。これを3回ほどくり返してください。妊娠中の方は、三陰交と合谷を強く刺激しないでください。
鍼灸院での体質の見立て
鍼灸院では、問診に加えて、舌の色や形、苔の様子(舌診)、脈の状態(脈診)、お腹の張りや硬さなども診て、体質を見立てます。[1]
同じ悩みでも、見立てた体質によって選ぶツボや施術の組み立てが変わります。セルフチェックで「いくつも当てはまって、どれかわからへん」という場合も、気軽に相談してみてください。
セルフチェックの注意点と、受診したいサイン
この記事のセルフチェックは、今の体の傾向を知るための目安です。病気を見つけたり、診断したりするものではありません。
体質のサインと似た症状が、病気から出ていることもあります。次のような場合は、体質のせいと決めつけずに、医療機関を受診してください。
医療機関を受診したいサイン
- 強いだるさや息切れ、動悸が続く
- はっきりした理由がないのに、体重が急に減った・増えた
- むくみが急にひどくなった、片足だけがむくむ
- のどの渇きが強く、水をたくさん飲む・尿が多い
- 月経の量が急に増えた、不正出血がある
- 急に耳が聞こえにくくなった、目が赤く強く痛む、今までにない激しい頭痛がある(すぐに受診してください)
よくある質問(Q&A)
Q. いくつものタイプに当てはまりました。どれが本当の体質ですか?
A. いくつものタイプに当てはまるのは、めずらしいことではありません。体質は重なって出てくることが多いので、当てはまる数が多いものから順に、ケアを取り入れてみてください。
Q. 体質は変わりますか?
A. 変わります。季節や年齢、睡眠や食事、ストレスなどで、体質のバランスは動いていきます。季節の変わり目や、生活が変わったときに、もう一回チェックしてみてください。
Q. 9タイプ以外の体質もありますか?
A. あります。東洋医学には、ここで紹介した9タイプよりも細かい見立てがたくさんあります。この記事では、髪や肌、体の不調の相談でよく出てくるものをしぼって紹介しています。
Q. セルフチェックの結果だけで、漢方薬やサプリを選んでもいいですか?
A. 漢方薬は医薬品なので、体質に合わないものを飲むと副作用が出ることもあります。選ぶときは、医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
- 東洋医学では、体の状態を「気・血・水」と「五臓」から見立てます
- この記事では、よく出てくる体質を9タイプにしぼって紹介しました。東洋医学の体質は、この9つがすべてではありません
- 体質は重なって出ることが多く、季節や年齢、生活で変わっていきます
- セルフチェックは目安です。気になる症状が続くときは、医療機関を受診してください
自分の体質を知ると、「なんで私はこうなるんやろう」と思っていた不調の理由が、少し見えてくることがあります。今の体と向き合うことが、これからの髪や肌、体をつくっていきます。
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出典
- World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics, Chapter 26: Supplementary Chapter Traditional Medicine Conditions – Module I(気虚 SE90、気滞 SE91、血虚 SF00、瘀血 SF01、湿 SE82、湿痰 SF13、津液不足 SF10、燥 SE83、脾気虚 SF70、脾虚血虧 SF75、腎陰虚 SF93、腎陽虚 SF97、肝火上炎 SF58、肝鬱血瘀 SF55、肝腎陰虚 SF5H ほか)icd.who.int(2026年10月12日確認)
免責事項
本記事は一般的な美容・健康情報の提供を目的としており、診断や治療の代わりになるものではありません。セルフチェックは体の傾向を知るための目安です。気になる症状がある場合や、症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。

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