秋になると、お風呂の排水口やブラシに残る髪の量が気になってきませんか?
「抜け毛増えたかも」って相談、この時期は多いんですよ。
気のせいかなと思うかもしれませんけど、研究でも、夏に“抜ける準備”に入る髪がいちばん多かったと出てるんです。[1] 準備に入った髪は2〜3か月たってから抜けるので、ちょうど秋に「増えた」と感じやすくなります。[3]
私が鍼灸師として大事にしているのは、「健康と美しさは表裏一体」という考え方です。秋の抜け毛も、夏の疲れや乾燥が体に残っているサインとして受け止めて、髪と体の両方から整えていく。それが、私の考える「リバースエイジング」です。
この記事でわかること
- 秋に抜け毛が増えたと感じる理由(研究でわかっていること)
- 心配いらない抜け毛と、皮膚科に相談したいサイン
- 東洋医学の体質チェックと、タイプ別のツボ
- 秋に見直したい毎日の習慣
施術の現場でよく受けるご相談
秋口になると、こんな声をよく聞きます。
「シャンプーのとき、手にからまる髪が増えた気がします」
「毎年この時期になると抜け毛が気になるんです」
「夏バテが抜けへんうちに、髪までパサついてきました」
秋に抜け毛が増えるのは本当?研究でわかっていること
髪は「伸びる→休む→抜ける」をくり返している
髪は1本ずつ、伸びる時期(成長期)、伸びるのが止まる時期(退行期)、休む時期(休止期)をくり返しています。日本皮膚科学会によると、休止期は2〜3か月あって、次の髪が生える準備ができると抜けます。[3]
このサイクルを「毛周期」といいます。抜けるのは、次の髪に場所をゆずるためなんです。
1日に抜ける髪は、個人差や季節、ヘアケアの仕方にもよりますけど、おおよそ1日100本くらいまでといわれています。[3]
夏に「休む髪」が増えて、秋に抜ける
季節と抜け毛の関係を調べた研究がいくつかあります。
- スイスの女性823人の研究:抜け毛が気になって受診した健康な女性の髪を6年間分調べたところ、休止期の髪の割合は夏にいちばん高く、春に小さな山がもう一つあり、冬の終わりにいちばん低いという結果でした。[1]
- フランスの男性10人を8〜14年追いかけた研究:休止期の髪の割合は、夏の終わりから秋のはじめにいちばん高くなりました。研究チームは、日照時間などの気候とも関係があると述べています。[2]
夏に休止期に入った髪が、2〜3か月かけて秋に抜けていく。そう考えると、「秋に抜け毛が増えた」という感覚には、ちゃんと理由があるんです。
ただ、どちらもスイスやフランスでの研究で、人数もそこまで多くありません。日本の気候で同じように出るかは、まだはっきりしていません。
夏の疲れも、髪に響いてくる
臨床経験上、髪の悩みで相談に来られる方の多くが、次のような背景を抱えています。
- 首・肩の緊張(こり)
- 目の疲れ(眼精疲労)
- 頭痛
- 冷え(夏は冷房で冷える方も多いです)
- 睡眠不足(暑くて眠りが浅くなりがち)
- 栄養の偏り(食欲が落ちて、冷たいものやさっぱりしたものばかりになりがち)
これらは、大きく2つの面から髪に関わると考えています。
- 血の巡りの面:首や肩の緊張、冷えは、頭への血の巡りを滞らせると東洋医学では考えます。髪の材料になる栄養や、休息が足りない状態も、髪づくりの土台を弱らせます。日本皮膚科学会も、髪の新陳代謝にはいろんなビタミン・ミネラルが関わること、無理をせず休息をとることが大事だと書いています。[3]
- ストレスの面:ストレスで増えるコルチゾールというホルモンは、毛包の働きや、髪が生えかわるサイクルに影響することが知られています。[4] マウスの研究では、慢性的なストレスでこのホルモン(マウスではコルチコステロン)が増えると、毛包が休止期にとどまる期間が長くなり、髪が生えにくくなったと報告されています。[5](人で同じことが起こるかは、さらに研究が必要です)
また、大きな手術や重い感染症、無理なダイエットなどで体に強い負担がかかると、そのあと抜け毛が増える「休止期脱毛」が起こることも知られています。[3]
心配いらない抜け毛と、皮膚科に相談したいサイン
季節による抜け毛は、多くの場合、時間がたつと落ち着いてきます。ただ、次のようなときは季節のせいだけやない可能性があります。一回、皮膚科で診てもらってください。
皮膚科に相談したいサイン
- 抜け毛が増えた状態が、2〜3か月たっても落ち着かない
- 1日100本を大きくこえる日が続く
- 丸く抜けているところがある(円形脱毛症のことがあります)
- 分け目や頭頂部の地肌が、急に透けて見えるようになった
- 頭皮に赤み・かゆみ・フケ・痛みがある
- だるさ、動悸、息切れ、体重の急な変化、月経の乱れなど、体調の変化も一緒に出ている
日本皮膚科学会は、抜け毛の原因として、甲状腺の病気や膠原病、亜鉛不足、薬の副作用などもあげています。[3] 体の病気が隠れていることもあるので、気になるときは早めに相談しておくと安心です。
東洋医学で見る、秋の髪
東洋医学では、秋は「燥(そう)」=乾燥の季節と考えます。そして、乾燥の影響を受けやすいのが「肺」です。
ここでいう「肺」は、呼吸をする臓器だけやなくて、皮膚や体毛、鼻までふくめた一つのグループのこと。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)の伝統医学の章でも、肺の系統には皮膚と体毛がふくまれると書かれています。[6]
そこに、夏の暑さや冷房、寝不足、食欲の落ちこみで消耗した体の疲れが重なってくる。秋の抜け毛やパサつきは、こうした「夏の疲れ」と「秋の乾燥」が重なって出てくると、東洋医学では見立てます。
あなたはどのタイプ?東洋医学の体質チェック
次のサインは、ICD-11 の伝統医学の章で、それぞれの体質(証)の特徴としてあげられているものをもとにしています。[6]
当てはまる項目が多いタイプが、今のあなたの体質に近いと考えてみてください。いくつかのタイプが重なっていることも、よくあります。
① 燥(そう)・血燥(けっそう)タイプ:乾燥で潤いが足りない
髪に表れやすいこと:髪が乾燥してツヤがない、パサつく、頭皮がかゆい
- 肌が乾燥する、かゆみが出やすい
- 鼻やのど、口が乾く。から咳が出る
- 目が乾く
- 便秘しやすい
- めまいがする、舌が乾いている
おすすめのツボ:太淵(たいえん)・三陰交(さんいんこう)
② 血虚(けっきょ)タイプ:血が足りない
髪に表れやすいこと:髪が細くなる、抜けやすい、ツヤが出にくい
- 顔色が青白い、または黄色っぽい。唇や爪の色が薄い
- 肌が乾燥しやすい、爪が割れやすい
- 立ちくらみ・めまいがする、目がかすむ
- 動悸がする、夢をよく見る、物忘れが増えた
- 手足がしびれる、こむら返りが起こりやすい
- 月経の量が少ない・色が薄い、周期が乱れやすい
おすすめのツボ:血海(けっかい)・三陰交・足三里(あしさんり)
③ 気虚(ききょ)・脾虚(ひきょ)タイプ:夏の疲れでエネルギーが足りない
髪に表れやすいこと:髪に勢いがない、抜け毛が増える。栄養が髪まで回りにくく、血虚につながりやすい
- 疲れやすい、だるい、元気が出ない
- 少し動くと息が切れる、話すのがおっくう
- 暑くないのに汗が出る
- 食欲がない、食後にお腹が張る
- 便がゆるくなりやすい
- 舌がぼってりして、ふちに歯のあとがつく
おすすめのツボ:足三里
④ 腎虚(じんきょ)タイプ:生命力のもとが弱っている
髪に表れやすいこと:髪の勢いが落ちる、抜け毛、白髪
- 腰や膝がだるい、力が入りにくい
- 耳鳴りがする、物忘れが増えた
- 夜中にトイレで目が覚める
- 年齢より老けたと感じる、歯がぐらつく
- 冷えるタイプ(腎陽虚):寒がり、手足や足腰が冷える、元気が出ない
- ほてるタイプ(腎陰虚):手足や胸がほてる、寝汗をかく、のどが渇く、ほおが赤くなる、眠りが浅い
おすすめのツボ:太渓(たいけい)、冷えるタイプは腰の腎兪(じんゆ)を温める
⑤ 気滞(きたい)・肝火(かんか)タイプ:ストレスで巡りが滞る・熱がこもる
髪に表れやすいこと:ストレスが続くと抜け毛が気になる、頭皮や首肩がこわばる
- 気滞:のどがつかえる感じ、胸やわき腹・お腹が張る、気分が落ちこみやすい
- 肝火:イライラしやすい、頭痛やめまい、目が赤く痛む、口が苦い、顔が赤くなりやすい、寝つきが悪い
おすすめのツボ:太衝(たいしょう)・合谷(ごうこく)
⑥ 瘀血(おけつ)タイプ:血の巡りが滞っている
髪に表れやすいこと:頭皮や顔色のくすみ、ツヤのなさ
- 顔色が暗い、唇が紫っぽい
- 青あざができやすい
- いつも同じ場所が痛む(肩こり・頭痛など)
- 月経痛が重い、月経血が暗い色で塊がまじる
- 舌が紫っぽい、舌の裏の静脈が太く浮き出ている
おすすめのツボ:血海・三陰交
施術の現場では、秋口に抜け毛の相談に来られる方は、夏の疲れからくる気虚・脾虚のサインに、乾燥による燥・血燥のサインが重なっている方が多い傾向があります。
※急に耳が聞こえにくくなった、目が赤く強く痛む、今までにない激しい頭痛がある、といった場合は、体質の問題ではなく急いで治療が必要な病気のこともあります。すぐに医療機関(耳鼻咽喉科・眼科・内科や脳神経外科など)を受診してください。
治療院(鍼灸院)でできること
鍼灸院では、問診に加えて、舌の色や形(舌診)、脈の状態(脈診)、お腹の張りや硬さなども診て体質を見立てて、その方に合ったツボを選んで施術を組み立てます。[6]
秋の抜け毛の相談では、頭皮や首・肩のこわばりをゆるめることに加えて、夏の疲れで落ちた胃腸の働きや、乾燥しやすい体の状態にもアプローチしていきます。セルフチェックはあくまで目安なので、気になる方は専門家に相談してみてください。
秋に見直したい毎日の習慣
| 習慣 | ポイント |
|---|---|
| 睡眠 | 夏の寝不足をここで取り戻すつもりで。寝る前のスマホを少し早めに切り上げるだけでも違います |
| 食事 | 夏に冷たいものやさっぱりしたものが続いた方は、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)と、鉄をふくむ食材を意識して。温かい汁物で胃腸をいたわるのもおすすめです |
| 洗い方 | 爪を立てず、指の腹でやさしく。熱すぎるお湯は頭皮の乾燥につながりやすいので、ぬるめにしましょう |
| 乾かし方 | 濡れたまま放っておかず、根元から先に乾かします。ドライヤーは頭から少し離して、同じところに当て続けないように |
| 首・肩 | 夏の冷房で冷えた首まわりを、ストールやお風呂で温めましょう |
日本皮膚科学会も、バランスのとれた食事と、無理をせずに休息をとる規則正しい生活が大事だとしています。[3]
今日からできるセルフケア:秋のツボ
頭のてっぺんのツボ「百会(ひゃくえ)」
左右の耳のいちばん高いところを結んだ線と、顔の中心線が、頭のてっぺんで交わるところにあるツボです。両手の中指を重ねて、気持ちいいと感じる強さで5秒ほど押して、ゆっくり離します。これを3回ほどくり返してください。
体質に合わせて選ぶツボ
| ツボ | 場所 | 主なタイプ |
|---|---|---|
| 太淵(たいえん) | 手のひら側の手首のしわの上で、親指側の脈が触れるところ | 燥・血燥 |
| 血海(けっかい) | ひざのお皿の内側の上の角から、指3本分ほど上にあるくぼみ | 血虚・瘀血 |
| 三陰交(さんいんこう) | 内くるぶしのいちばん高いところから、指4本分ほど上。すねの骨のきわ | 燥・血燥・血虚・瘀血 |
| 足三里(あしさんり) | ひざのお皿の外側の下にあるくぼみから、指4本分ほど下 | 気虚・脾虚・血虚 |
| 太渓(たいけい) | 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ | 腎虚 |
| 太衝(たいしょう) | 足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ | 気滞・肝火 |
| 合谷(ごうこく) | 手の甲で、親指と人差し指の骨が交わるところの、人差し指側のくぼみ | 気滞・肝火 |
指の腹で、気持ちいいと感じる強さで5秒ほど押して、ゆっくり離します。これを3回ほどくり返してください。太淵は脈が触れるところなので、強く押さずにやさしくさする程度で十分です。妊娠中の方は、三陰交と合谷を強く刺激しないでください。
よくある質問(Q&A)
Q. 秋の抜け毛は、いつごろ落ち着きますか?
A. 季節の抜け毛は、時間がたつと落ち着いてくることが多いです。スイスの研究では、休止期の髪の割合は冬の終わりにいちばん低くなっていました。[1] ただ、2〜3か月たっても落ち着かへん場合は、季節以外の原因も考えられるので、皮膚科に相談してください。
Q. 抜け毛が増えたら、シャンプーの回数を減らしたほうがいいですか?
A. 休止期に入った髪は、次の髪が生える準備ができると抜けていきます。[3] 洗うときに抜けるのは、その髪が手に残っているだけのことが多いんです。日本皮膚科学会も、頭皮が乾燥しすぎたり、油っぽくなったりしない頻度で洗うことをすすめています。[3] 無理に回数を減らさず、やさしく洗うことを意識してみてください。
Q. 毎年秋に抜け毛が増えます。何か病気ですか?
A. 季節によって抜け毛が増えたり減ったりするのは、研究でも見られている変化です。[1][2] ただ、年々量が増えている、地肌が透けてきた、という場合は、女性型脱毛症などのこともあります。上の「皮膚科に相談したいサイン」に当てはまるものがあれば、一回診てもらってください。
Q. 鍼灸で抜け毛は治りますか?
A. 鍼灸で抜け毛が治る、とお約束することはできません。施術の現場では、体質を見立てたうえで、頭皮や首・肩のこわばり、巡り、睡眠や胃腸の状態といった「髪をつくる土台」にアプローチしていきます。病気が原因の抜け毛は、まず医療機関での治療が優先です。
まとめ
- 秋に抜け毛が増えたと感じるのは、めずらしいことではありません。研究では、夏に休止期の髪の割合がいちばん高くなっていました
- 休止期は2〜3か月。夏に休んだ髪が、秋に抜けていくと考えられます
- 2〜3か月たっても落ち着かない、丸く抜ける、地肌が急に透けてきた、体調の変化がある、といった場合は皮膚科へ
- 東洋医学では、秋は「乾燥」と「肺」の季節。夏の疲れ(気虚・脾虚)と乾燥(燥・血燥)が重なっていないか、体質チェックで確かめてみてください
秋は、夏にがんばった体をいたわってあげる季節です。髪の変化をきっかけに、睡眠や食事、体の巡りを見直していきましょう。今からの手入れが、これからの髪をつくっていきます。
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出典
- Kunz M, Seifert B, Trüeb RM. Seasonality of hair shedding in healthy women complaining of hair loss. Dermatology. 2009;219(2):105-110. doi:10.1159/000216832(PubMed より)
- Courtois M, et al. Periodicity in the growth and shedding of hair. Br J Dermatol. 1996;134(1):47-54. PMID:8745886(PubMed より)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 脱毛症」Q1・Q4・Q17・Q18 qa.dermatol.or.jp(2026年10月12日確認)
- Thom E. Stress and the Hair Growth Cycle: Cortisol-Induced Hair Growth Disruption. J Drugs Dermatol. 2016;15(8):1001-1004. PMID:27538002(PubMed より)
- Choi S, et al. Corticosterone inhibits GAS6 to govern hair follicle stem-cell quiescence. Nature. 2021;592(7854):428-432. doi:10.1038/s41586-021-03417-2(PubMed より)
- World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics, Chapter 26: Supplementary Chapter Traditional Medicine Conditions – Module I(肺の系統 SA6、燥 SE83、血燥 SF04、血虚 SF00、瘀血 SF01、気虚 SE90、気滞 SE91、肝火上炎 SF58、脾気虚 SF70、腎陰虚 SF93、腎陽虚 SF97 ほか)icd.who.int(2026年10月12日確認)
免責事項
本記事は一般的な美容・健康情報の提供を目的としており、診断や治療の代わりになるものではありません。研究結果は特定の条件で得られたもので、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。抜け毛や頭皮の異常、体調の変化が気になる場合は、医療機関にご相談ください。

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